プロフィール
著者(PN):
月下香治
(かすか・よしはる)
Yoshiharu Kasuka

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y-kasuka@jewelryeyes.net


2013年9月15日

2014年9月15日



2014年3月15日(土)

活用形擬人化作品『活用さん』

 待っている方がいるのかどうかはわかりませんが、皆様たいへんお待たせいたしました。「変なこと」とは表題のとおり、活用形の擬人化です。擬人化、流行ってますよね?
 昨年の3月から5月の稿によって、日本語の動詞の活用形は160個以上存在するということがわかりました。ということは、160人以上の人物が登場することになるのでしょうか。そういう作品も中にはあるでしょうが(化学元素の擬人化とか)、そんなにもたくさんの設定を作り上げるのはやはり大変です。
 稿では、日本語の動詞の活用形はけっこうシステマティックに組み上げられているということを解説しました。そういうシステム的な部分を抽出していけば、キャラクターの数も少なめになりそうです。つまり、「活用形」の擬人化と言いながら、実際は文法現象の擬人化ということになります。
 ということで、1年越しの企画、活用形擬人化作品『活用さん』の設定を、まだまだ荒削りではありますが解説してみたいと思います。
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 日本の首都の程近く、標準語(首都方言)とほぼ変わらない方言が使用される地域に位置する地方都市、S県南東部の今昔(こんじゃく)市には、様々な文法現象を象徴する擬人化人物、通称「活用さん」が多く暮らしています。今昔市南部の幡良木町(はたらきまち)の新興住宅地の一角に、4軒の家が並んで建っており、それぞれの家には日本語の動詞の活用形を象徴する活用さんの4姉妹が住んでいました……
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――といったような感じの書き出しで始まる作品です。ゆるふわ系萌え擬人化を目指してはいますが、なにぶん私は絵心を持ち合わせていませんので、設定のみを膨らませています。
 地名について説明しましょう。「S県」は該当しそうな県がふたつほどありますが、まあだいたいわかるでしょう。「今昔(こんじゃく)」は、「活用」の英訳 "conjugation" の略 "conjug" のもじりです。「幡良木(はたらき)」は、「活用」に相当する江戸時代以前の用語「働き」に由来しています。今昔市が具体的にはどの都市を想定しているのかについては、大阪在住の私には東日本に土地勘がありませんので、まだ未定です。
 「活用さん」たちはファンタジー的な存在ではなく、(とある1点を除いて)普通の人間とほぼ変わらない存在です。萌え擬人化のため、作品に登場する活用さんは女性ばかりですが、男性の活用さんもどこかには存在しています。活用さんは日本語名(外国語の活用さんはその言語の自然言語での氏名)を持っていますが、一般的に家族以外からは文法現象の用語を取って「○○さん」(年下ならば「○○ちゃん」)と呼ばれます。活用形の擬人化である活用さんは、その活用形をやや多用する傾向がありますが、もちろんそれしか話せないということはありません。活用さんの多くにはその文法現象を織り込んだキーフレーズが設定されており、性格を端的に象徴しています。
 続いて、人物について紹介していきましょう。主要人物は4軒×4姉妹で計16人、導入としてはやや多めです。情報が不十分な点については、ご容赦ください。
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 4軒の家は、西から順に熊田(くまだ)家、山極(やまぎわ)家、時宗(ときむね)家、法生寺(ほうしょうじ)家。それぞれ、変数集合・変数集合・変数集合・変数集合の元を擬人化した活用さんが住んでいます。
 熊田家三女の乃々(のの)さんは能動形の擬人化で、通称「能動さん」。キーフレーズなし。高校2年生、9月生まれ(おとめ座)。いちおう本作の主人公ということになってはいますが、元気で能天気という以外に特にこれといって特徴がありません。
 熊田家四女の朱々(じゅじゅ)さんは受動形の擬人化で、通称「受動さん」。キーフレーズ「読まれる」。高校2年生、9月生まれ(おとめ座)。怖がりでおどおどしていますが、やればできる子とも言われています。なお、能動さんと受動さんは双子です。
 熊田家長女の初美(はつみ)さんは自発形の擬人化で、通称「自発さん」。キーフレーズ「読む」。大学1年生、4月生まれ(おひつじ座)。ぽんやりした見た目ですが、するべきことはちゃんとこなすしっかりしたお姉さんです。
 熊田家次女の司佐(つかさ)さんは使役形の擬人化で、通称「使役さん」。キーフレーズ「読ませる」。大学1年生、4月生まれ(おひつじ座)。物臭な性格で、人に指図することがしばしばあります。なお、自発さんと使役さんは双子です。
 山極家次女の有佳(ゆうか)さんは肯定形の擬人化で、通称「肯定さん」。キーフレーズなし。高校2年生、10月生まれ(てんびん座)。度量が大きく、いろんなことに挑戦しようとします。
 山極家三女の未憂(みゆう)さんは否定形の擬人化で、通称「否定さん」。キーフレーズ「読まない」。高校2年生、10月生まれ(てんびん座)。慎重すぎて、食わず嫌いになりがちな嫌いがあります。なお、肯定さんと否定さんは双子です。
 山極家長女の寧(しずか)さんは丁寧形の擬人化で、通称「丁寧さん」。キーフレーズ「読みます」。高校3年生、7月生まれ(かに座)。丁寧語キャラ。普段は物静かですが、怒ると怖いです。
 山極家四女の望(のぞみ)さんは願望形の擬人化で、通称「願望さん」。キーフレーズ「読みたい」。高校1年生、2月生まれ(みずがめ座)。人見知りで恥ずかしがり屋だけど、実は耳年増だったりします。
 時宗家次女の舞衣(まい)さんは現在形の擬人化で、通称「現在さん」。キーフレーズなし。高校1年生、12月生まれ(やぎ座)。未来に夢見がちな乙女さんです。
 時宗家三女の知佳(ちか)さんは過去形の擬人化で、通称「過去さん」。キーフレーズ「読んだ」。高校1年生、12月生まれ(やぎ座)。経験豊富を自任していますが、実態は不明です。なお、現在さんと過去さんは双子で、唯一の一卵性双生児です。
 時宗家長女の桂子(けいこ)さんは継起形の擬人化で、通称「継起さん」。キーフレーズ「読んで」。高校3年生、5月生まれ(おうし座)。妹たちを見守る優しいお姉さんですが、ちゃっかりお願いすることもたまにあります。
 時宗家四女の令奈(れいな)ちゃんは命令形の擬人化で、通称「命令ちゃん」。キーフレーズ「読め」。中学3年生、3月生まれ(うお座)。一番年下なので、常に「〜ちゃん」と呼ばれます。実は法生寺家からの養子。口調が乱暴な気難し屋さんです。
 法生寺家長女の柊子(しゅうこ)さんは終止形の擬人化で、通称「終止さん」。キーフレーズなし。高校3年生、5月生まれ(おうし座)。時間に几帳面で、けじめをきっぱりとつけようとします。
 法生寺家次女の葉子(ようこ)さんは連用形の擬人化で、通称「連用さん」。キーフレーズ「読んだり」。高校3年生、5月生まれ(おうし座)。多くのことを同時にこなすながら族です。なお、終止さんと連用さんは双子です。
 法生寺家三女の幾子(いくこ)さんは意向形の擬人化で、通称「意向さん」。キーフレーズ「読もう」。高校2年生、8月生まれ(しし座)。ボーイッシュなボク少女。行動力と危うげな推察で突っ走っています。
 法生寺家四女の叶葉(かなは)さんは仮定形の擬人化で、通称「仮定さん」。キーフレーズ「読めば」。高校1年生、11月生まれ(いて座)。優等生で読書家で、唯一のメガネっ娘です。
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 ゆるふわ系なのでストーリーらしいストーリーというものはあまりありませんが、エピソードは基本的に家ごと、あるいは学年ごとに進行します。全員が関わるエピソードでは双子の姉の能動さん・肯定さん・現在さん・終止さん(+自発さん)が四家の連絡係を務めていますが、キーフレーズを持たない無特徴なキャラクターなので、集まっても特段変わったイベントが発生しません。むしろ、双子の妹の受動さん・否定さん・過去さん・連用さん(+使役さん)が秘密裏に結成している「裏連絡係」のほうが、ひねくれていて面白そうです。
 稿において、継起形と命令形に法としての性質を認めながら時制に分類していたのは、実は、擬人化したときに4軒×4姉妹に揃えようとしていたからなのです。その煽りを受けて、命令ちゃんの周囲のエピソードがゆるふわ系なのに重めです。
 活用さんが唯一普通の人間と異なるところは、日本語の文法が変化して、現代日本語が古典語、あるいは前時代語と呼ばれるようになるまで年を取らないということです。一部の作品のように物語的なループ時空に入っていると言ってもいいかもしれません。ちなみに、四家のお母さんたちは古典日本語の活用さんで、従姉妹同士です。熊田真由美(まゆみ)さん、山極千鶴子(ちずこ)さん、時宗美紀(みき)さん、法生寺紅葉(くれは)さんはそれぞれ古典語の受動形・否定形・過去形・仮定形の擬人化で、キーフレーズは「読まゆ」「読まず」「読みき」「読まば」、「先代受動さん」「先代否定さん」「先代過去さん」「先代仮定さん」と呼ばれています。
 活用さんが通う学校についても解説しましょう。
 自発さんと使役さんが通う大学は、今昔市の中心部に位置するS県立人材活用大学、通称「カツダイ」。言語学の知識を通じて社会に貢献できる人材を育成することを目的として設立された大学で、日本語学部・外国語学部・教育学部があります。就職率が高く、共学ながら女子学生の人気が高いです。
 中学生・高校生が通う学校は、幡良木町北部に位置する中高一貫教育の幡良木学園、通称「ハタコー」。正式名称はやや長く、「S県立人材活用大学教育学部附属幡良木学園中等教育学校」。人材活用大学と同じく語学に注力した課程を持ち、高等部は普通科のほかに国文科・国際科があります。海外からの留学生(外国語の活用さん)を積極的に受け入れています。やはり共学ながら、女子生徒の比率が高くなっています。
 以上が『活用さん』のおおまかな設定です。文字だけではなく視覚情報も欲しいところですが、私ひとりの力ではどうにも難しいですね。
 さて、これにて予告した情報を出しきったということで、安心してまた9月15日まで更新をサボってしまいそうですが、実は2014年9月15日は当サイト設立10周年です。といっても、何か特別なイベントをするわけでもないのですが、できれば更新頻度を少しでも上げるように努力したいと思っています。
 それでは、今回はそういうことで。


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