プロフィール
著者(PN):
月下香治
(かすか・よしはる)
Yoshiharu Kasuka

メール
y-kasuka@jewelryeyes.net


2004年12月31日

2005年1月13日



2005年1月7日(金)

Much ado on the Web

 12月31日は近畿地方にも珍しく大量の積雪を見、高速道路が通行止めなどの規制をされましたので、ROSESの年越しイベントには参加できませんでした。残念です。ただ、0時直後に著作権表示の年号を変更する作業をすることはできました。年明け直後はトラフィックが大いに気になるところではありましたが、意外とスムーズに作業は完了しました。
 このような不測の事態を始めとして、この年末年始には『GUNS BAR ROSES』や当サイトにいくつかの動きがありましたので、ご報告したいと思います。先の更新で予告した「ココロの内側」につきましては、まだ考えがまとまっていませんので、また後日ということにします。
 大量の積雪で交通に大混乱を来した同日、当サイトに大量のアクセスがありました。ほぼ同時期にオープンした『Lynn Minmay Squadron』とは一時期100カウントほども水を空けられていたのですが、この日、一気に抜き返してしまいました。言うまでもなく、『GUNS BAR ROSES』の掲示板から多数の閲覧者が流れ込んだのです。
 当サイトで「萌ゆる想いを」(12月15日)を発表したのに呼応して、キャプテンが『GUNS BAR ROSES』の掲示板上で「萌え」についての議論を始めたということは、これまでもお伝えしてきた通りです。私も議論への参加をキャプテンに求められました。キャプテンはこれまでも何回か、掲示板上で議論を提起したり、ROSESの祝事に際して祝辞を投稿できるように誘導したりしていましたが、本来は自由参加によるべきネット社会への参加を強制することにつながりかねないので、私は懸念を示していました。ただ、今回は思うところがありましたので、私も記事を寄せておきました。
 一方、ROSESの掲示板の参加者は大半は「萌え」とは何らの馴染みもない一般人です。もともとのキャプテンの発議が「萌え」に批判的ということもあって、「萌え」に不理解を示す投稿が過半を占めるようになりました。中には、特定の事件と関連付けて「萌え」を非難する記事まで散見するようになっていたのです。
 当時、ROSESの近縁である奈良県北西部で陰惨な事件が発生し、世人の心胆を寒からしめていたことは、皆様もご存じのことと思います。被害者の境遇を哀しむとともに、加害者の理不尽さを憎むのは、私とて世人といささかも変わるところではありません。ただ、「萌え」を近しく感じる者たちがあたかもこのような犯罪の予備軍であるかのように決め付ける論調には、少なからず反感を覚えていました。
 はたして強硬に反論するべきか、穏便に反論するべきか、はたまた削除するべきか、規約を改定して抑制するべきかと、いろいろと考えを巡らせていました。管理人が同意できない意見を掲示板上に放置しておく道理はありませんが、事が難しいこともあり、そのまま時間が経過していくばかりでした。
 そして12月30日、事件の被疑者が確保されました。すると、ROSESの常連のひとりがその近隣に居住しており、メディアスクラムにも遭遇したということが判明したのです。その顛末が掲示板に投稿されると、某巨大掲示板の利用者を始めとして、それを察知したネットサーファーたちが殺到しはじめました。スレッドの端緒であるキャプテンの動議には当サイトのURLが参照先として記載されていましたので、12月31日に至って、当サイトにも多くの閲覧者が流入する次第となったのです。
 ここに至って、当サイトの論説が当の事件との関連で認識される危険が予見されるようになりました。当サイトでは論理的な厳密性を追究する観点から世間の常識に安住することを諌めるような論説を掲載することが多くありましたが、これを反社会的と見られて非難されるのは本意ではありません。とりあえず当のスレッドから私が書いた記事と参照URLを削除したところ、その後カウンターの動きは平均程度に落ち着きました。
 しかし、『GUNS BAR ROSES』が事件と関連付けられる危険性はまだ残されています。スレッドごと削除しようにも、あまりにも膨大になりすぎていましたので、私の一存ではためらわれます。そこで、キャプテンに伺いを立てたところ、明けて1月1日になって私に一任するとの連絡がありましたので、当該スレッドを削除し、掲示板の規約に次の一文を追加することになりました。
「(当サイトやその内容、管理人や他の訪問者様、また、無関係の他者を誹謗・中傷する記述の記入は、厳に慎んでください。)特に、現実の時事問題に関連付けて実在の社会的存在について否定的・批判的な印象・見解を強調する記述は、社会的影響を考慮して不適切とみなす場合があります。
 その後は『GUNS BAR ROSES』の掲示板もカウンターも鎮静化していますので、危険は去ったと見ていいのでしょう。私も一安心です。
 私がこのような論調を脅威と見ているのは、差別や偏見と根を同じくする悪感情を無闇に露出させてはならないという公憤もありますが、いずれは創作サイトを創設する私自身の個人的な立場によるところもあります。創作とは世界についての思考実験であり、表面上は不義に見えることであっても直視しなければならないものですが、もちろんその不義を実行に移すわけではありません。しかし、世上には表層にかかずらわり、その不義を作者の性質と捉え、また、悪風の根源であるかのように吹聴する浅薄な論者が多く存在することを承知してもいますので、創作物に関する個人的嗜好と社会的な事件とは完全に無関係であるとのスタンスを貫いておきたいと考えているのです。
 この条項はかなり抽象的な言い回しをしていますが、「差別」や「偏見」といったそれ自体が「悪」であるとみなされるものに自分の心が染まっていると発言者自身が信じているとは考えにくいところがありますので、「否定的・批判的な印象・見解を強調」という包括的な表現を採ることにしたのです。非難するに足ると信じる十分な根拠があるとされる場合でも、事は変わりません。しかし、訪問者が社会に対する不平不満を吐露することを全面的に禁止するのは忍びないものがありますし、深刻な表現の自由の抑圧は創造者としても望むところではありませんので、「社会的影響を考慮して」ということにしています。今後の運用は難しくなることが予想されます。
(キャプテンや他の常連はのんびり構えているようですが、トイガンマニアという特に誤解を受けやすいマイノリティーとして、世間の破滅的な治安意識や、それに迎合するかに見せ掛けて恣意的に権勢を振りかざそうとする選良たちの動向に十分警戒する必要があるのではないでしょうか)
 その後1月4日、久しぶりにROSESに来店しました。そこで上のような話が出た中で、『GUNS BAR ROSES』からのリンク報告の連絡について話が及びました。
 リンク報告の連絡については12月中に完了せよとの勧告が出されていましたが、現在まで手付かずになっていました。『GUNS BAR ROSES』関連の不要不急の案件と当サイトのマネージメントがバッティングした場合、当サイトのほうを優先する癖があるのです。しかし、当サイトにも利益があると見込んでいたリンク報告の連絡に手が伸びなかったのは、これが本当に私のするべき仕事なのかという疑念があったからでもあります。私はシステム担当であって、渉外担当ではないのです。
 キャプテンは「連絡が要らないのなら、そのように書くか、何も書かないはずだ。『一報があれば嬉しい』と書いてあるのなら、連絡を求めているのだから、応えてやる義務がある」と言いました。至極当然です。
 しかし、明示的に強制・禁止されなければ義務はないというのもネットの原則のひとつです。私は「そのように考えるのなら、それはコミュニケーションを重視する人間がするべきだ」と反論しました。コミュニケーションを重視して行動するのももちろん自由ですし、望ましいことでもあるでしょうが、その考えに従った行動を他者に強制することは好ましくはないはずです。
 すると、キャプテンは「あれらのサイトはガルマ(月下香治)が勝手に調べてリンクしたものだから、ガルマのほうで処理するべきではないのか」と主張してきました。また、「自分がネット上で行動すると、決まってガルマが批判する。自分はネットマナーとか関係なく行動する癖があるが、それでもいいのか」とも言いました。
 確かに、CGサイトの収集を精力的に進めていたのは私ですが、それは「銃を持った美少女」のイラストを掲載するサイトの詳細なリストを提供することが『GUNS BAR ROSES』の使命であると信じていたからです。アクセス数の向上の目論みは副次的なものです。そのような使命を重視しない、あるいは使命とすらしないと言うのであれば、それはそれでもけっこうなことです。
 また、ネットマナーと言うと何か箇条書きのようなものがどこかにあるというような印象がありますが、本来は実地で体得するものです。ネットマナーに違反する行為があっても、それをネット上で公然と指摘するのはマナー違反とされるところもありますので、ネットの外部で指摘されるのは貴重な経験と受け取ってほしいところです。全員がそう几帳面にマナーに殉じているわけではありませんので、それほど気負わなくてもいいはずです。
 結局、リンク報告の連絡はキャプテンが担当することになり、私は連絡先のリストを提供し、相互リンクの望みのないサイトをリンクから削減し、今後リンクを追加する際にはキャプテンの好みなども勘案して十分吟味するということで決着しました。『Lynn Minmay Squadron』の管理についてもキャプテンが少しずつ引き継いでくれることも約束してもらいました。これで多少なりとも負担が軽減し、遅れ気味だった本格サイトのシステム構築に専念しやすくなればいいなと思います。
 この議論では、閲覧者の利便という観点が欠落していた感があります。閲覧者はサイト管理人同士が分配・争奪する資源であるかのように考えていた節がありましたが、本来は正対して迎えるべき対等の存在です。こだわりを持ってオンリーワンのデータを作成せずに、本当にキャプテンが考えるほどに閲覧者に愛好されるサイトになれるのでしょうか。現実生活に負担にならない程度にネットに参加せよという原則によれば、それほど深刻に考えることでもないということになるのですが。
 さて、次回の更新は、毎月恒例メンテナンスの報告です。せっかく臨時メンテナンスでスッキリしたのに、美少女ゲームの体験版をダウンロードなんかして、またファイル容量を増やしていますよ。


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