プロフィール
著者(PN):
月下香治
(かすか・よしはる)
Yoshiharu Kasuka

メール
y-kasuka@jewelryeyes.net


2009年9月15日

2010年3月26日



2010年3月15日(月)

世界の言葉と点字

 前回の記事では今回からユーロイデオグラムの解説を始めると予告していましたが、なかなかそうも言っていられない状況になってきました。昨今の不況の影響で経済的に不如意になり、人工言語の構築のような「遊び」の部分には時間を割くことができなくなっているのです。
(私のような酔狂な人間は、不況のような全体的傾向には影響を受けないものだと思っていたのですがね。好況の恩恵も受けませんし)
 一方で、点字の研究はかなり進みました。ユネスコの資料等、さまざまな資料が手に入り、けっこうな少数言語の使用状況までわかるようになりました。本にできるほどのデータが揃いましたので、そっち系の分野でお目にかかることがあるかもしれません。
 2006年ごろの記事では、「現在の独立国の公用語に使用されている主要な文字体系の中で、私がその点字システムを把握していないものは、ミャンマーのビルマ文字、ラオスのラオ文字、アルメニアのアルメニア文字、グルジアのグルジア文字の4種を残すのみとなっています」と書きました。現在までにアルメニア文字とグルジア文字の点字は判明し、今では国ごと、言語ごとの個別のシステムを調べ上げる段階になっています。一方で、世界の言語を調べていく中で、モルディブのディベヒ語で使用されるターナ文字やカナダの先住民族言語で使用されるクリー文字の存在を知りましたので、「4種」というのは変わっていません。
 さらに一歩進んで、ヒエログリフ(エジプト象形文字)の点字について検索エンジンで調べてみました。しかし、日本語・英語・フランス語・ドイツ語では、検索エンジンの先頭からある程度の検索結果にはそれらしいサイトはありませんでした。もしかしたらエジプトにはデータがあるのではないかと思ってアラビア語でも検索してみましたが、やはりそれっぽいものはありません。
 現用言語でないヒエログリフにはたして点字が必要なのか、とお思いになる方もいるでしょう。しかし、視覚障害者の方が勉強したいと思うのならば、少数言語であれ、絶滅言語であれ、他のどんな分野であれ、独自の記号体系が存在するところにはやはり点字が必要になります。実際、調べたサイトの中には、「イギリスの大学の学生にヒエログリフの点訳を依頼された」という記述もありました。視覚障害者の好奇心と向学心が尽きない限り、晴眼者の責務も無限大なのです。
 確かに、ヒエログリフには点字化しにくい性質がいくつかあります。表音文字化されつつあったとはいっても不十分で、1文字で複数の音を表す文字が多くある一方で、音声には対応せずに意味のみを表す文字も多くあります。文字の大きさが統一されておらず、小さい文字は上下左右に複雑に配置されて記述されます。1文字が1音に対応し、文字が1次元的に配列されることを前提とする点字システムには不向きなのです。しかし、ヒエログリフよりも文字数の多い漢字にも、非公式ながら点字システムは存在します。ヒエログリフもUnicodeに収録されている現在、いずれヒエログリフの点字システムも開発されるかもしれません。
 さて、次回の更新についてですが、状況的に厳しいものがありますので、9月15日までは未定ということにしておきます。ヒエログリフの一覧表を眺めていて何か思い付いたら、更新するかもしれません。
 それでは、今回はそういうことで。


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