プロフィール
著者(PN):
月下香治
(かすか・よしはる)
Yoshiharu Kasuka

メール
y-kasuka@jewelryeyes.net


2005年1月19日

2005年1月27日



2005年1月22日(土)

お買い物・その4.5・続き

 1月14日金曜日に難波・日本橋方面に買い物に出たということは、前回1月19日の日記でお伝えしました。今回はその続き、昼食後の模様からお伝えいたします。
 昼食を終えた私は、学術書を物色するためにジュンク堂難波店に向かいました。
 「これで本でも買いなさい」と言って正月に1万円を手渡されたからには、1万円以上の学術書を買わねばなりません。それよりも何よりも、もとより私は「学究者」、将来の学術サイトの充実のためにも、資料を揃えておく必要があるのです。まあ、実はそれほど気負っているというわけでもなくて、理解するのが少々難しい本のほうが長く楽しめるというのが真実なのですが。
 前回難波を訪れた時(11月19日)には、語学関連の書籍を5冊ほど買いました。前々回、当サイトを開く前に難波を訪れた時も、買ったのは語学関連でした。今回は、できれば自然科学関連の書籍も交ぜておきたいと考えていました。
 私が欲しているのは、1冊でいろいろな分野の情報を網羅している本か、単発でひとつの分野を深く追究している本です。その本1冊だけで知的好奇心を満足させられるようなものがいいのです。こういう本は通俗学術書というのでしょうが、こういうのも「学術書」の範疇に入れておいてください。本格的な学術書は、特に自然科学では叢書、シリーズ物が多くて、1冊買ったら続きも買わねばならなくなりそうに思えてきますので、私の資金力では深入りすることがためらわれます。
 ということで、満足できてなるべく財布も痛まない学術書を求めてジュンク堂難波店をウロウロ、語学関連コーナーの3階と自然科学関連コーナーの2階を往復して、買うべき書籍を見定めました。その結果、語学関連の書籍は前回までの買い物で目ぼしい物はだいたい購入し、新たに買うにはさらなる情報を仕入れなければならないということで、今回は自然科学関連の書籍を6冊購入することにしました。
 まずは、『教えてほしい数学の疑問1/2』(数学セミナー編集部編・日本評論社・各2100円)。啓蒙的でありながらも本格的な数学誌『数学セミナー』(日本評論社)の編集部の手になる、高等数学に関する読者の素朴な質問と一流の数学者による回答を収集した質問回答集です。こういう質問回答集というものは、様々な分野の中でも特に人の関心を惹くものについてそれぞれ簡潔に解説がなされていますので、知的好奇心が強く刺激されます。
 ということで、読んでみました。…。素朴な質問とはいえ、うかつに読み進めていると、直感だけでは把握しきれなくなります。私は高校まで文系で、大学から理系に転向したニセ理系ということで、数学の一部の分野の知識が欠落しているのです。やはり腰を据えて読み進めていかなければならないようです。
 ここで、生物学コーナーの目立つ所に平積みにされた書籍が気に掛かりました。それは、前回の買い物でも気に掛けていながら、資金不足で購入には至らなかった書籍でした。ということで、『アフターマン』(ドゥーガル・ディクソン著・ダイヤモンド社・2520円)と『フューチャー・イズ・ワイルド』(ドゥーガル・ディクソン&ジョン・アダムス著・ダイヤモンド社・2520円)を買いました。
 『アフターマン』は、人類絶滅後、5000万年未来の地球における生物の進化の状況を生物学的知見によって大胆に予想し、豊富なイラストを用いて解説した書籍です。もちろん、生物の進化は偶然によるところが大きいですので、この本の通りになるとは限らない、むしろそんな可能性はほぼ0に等しいというようなものですが、こんな生物が現れるのならば是非とも一度この目で見てみたいと思わせるような珍妙で魅惑的な生物が立ち並んでいます。
 表紙に描かれているのは、かつては翼だった前肢で歩行し、後肢を前に突き出して、獲物を求めて徘徊する、現生のヒトほどもある大きさの恐怖の巨大コウモリ「ナイトストーカー」、まさに「アフターマン」の象徴とも言える生物です。見ていると、昔、図書館で借りて読んでいたころのことが思い起こされます。強い感銘を受けたその本を手元に置くことができて、とても感激です。
 『フューチャー・イズ・ワイルド』は、さらに予想を進めて、1億年後、2億年後の生物の進化の状況を鮮明なCGを用いて解説した書籍です。表紙に描かれているのは、胸鰭を翼に変えて鳥のように力強く海面上を羽ばたく魚「オーシャンフリッシュ」です。2億年後までには哺乳類は既に絶滅、全般的に脊椎動物は不遇で、イカなどの軟体動物に追われて魚類は空に逃げなければならないというのは、進化の悲哀と非情さを感じさせます。しかし、それほどまでの激変を生み出す進化のダイナミックさと、ここまで不確定なものさえも追究しようとする人類と科学の知的欲求の貪欲さには感服せずにはいられません。
 『アフターマン』の帯には、「『フューチャー・イズ・ワイルド』の著者が贈る」と書かれてあります。私は、『フューチャー・イズ・ワイルド』は『アフターマン』の続編だと思っていたのですが、奥付を見てみると、確かに『アフターマン』のほうが発行日が半年ほど後でした。恐らくは、CGを用いて未来の生物を描き出したテレビの企画番組を書籍にした『フューチャー・イズ・ワイルド』を世に出したところ、思わぬ人気が出たので、その源流となった『アフターマン』を急遽復刻させたのでしょう。
 こういう変な生き物は、未来だけではなく現代にも存在します。その名も『へんないきもの』(早川いくを著・basilico・1575円)。形が変だったり動きが変だったり名前が変だったりする生物数十種を、見開き2ページを使って1種ずつ、細密なイラストと科学書とは思えない不謹慎(褒め言葉)な文章で解説した書籍です。
 アロワナやウミホタルのようなメジャーなものからプラナリアやクマムシのような生物ファンには夙に人気なもの、コウモリダコやヤマトメリベのような最近人気の兆しが出てきたものから私も初めて名を聞くような不可思議な生き物まで、その生物の珍妙な性質とともに時に辛辣な社会風刺も絡めて解説されています。目も眩むような変な姿の生き物のイラストが並んでいますが、一番インパクトを感じたのは、やはり「深海で笑う者」オオグチボヤでしょうか(ところでユーリファリンクスは?)。
 ここまでは通俗学術書でしたが、残りの1冊は専門的な学術書です。それは、『高温超伝導とフラーレンの科学』(クバプロ・3057円)。高温超伝導とフラーレンに関する1997年の公開シンポジウムにおける講演と質疑応答を収録した書籍です。
 高温超伝導は恐らくご存じかと思いますので説明は控えておきますが、「フラーレン」というのは炭素原子60個がサッカーボール状の網の目の形に結合した球状の分子です。大学時代に理学部化学棟の掲示板の記事で目撃して以来、私の心を捕らえて離さないこのフラーレンという分子を詳細に特集した書籍を長らく探していましたが、ひとつの分野のみに特化した専門書というものが科学書には少ないもので、今まで見つけることができませんでした。この書籍では高温超伝導に関することも併せて記載されていますが、フラーレンも超伝導のひとつの有力な素材の候補とされています。超伝導に関する現在の知見を確認するいい機会でもあります。さすがは本格的な学術書ということで、詳細な実験データが豊富に掲載されていますが、7年前に発行された書籍なので、現在では発見されている物質が未発見とされていたり、現在では解決されている問題が未解決とされていたりするのは、まあ仕方のないことでしょう。
 この6冊をレジに持っていくと、またあの丈夫そうな手提げバッグに入れてもらいました。どうやら、計1万円以上の買い物をすると、ジュンク堂のロゴ入りの手提げバッグをもらえるようです。
 さて、ここまでは実にアカデミックなお買い物でしたが、ここからは一転、怪しげな買い物が続くことになります。実は、『選ばれた受験生のためのハイブリッド英単語集/続・〜』などというものを購入したのですが…。この続きは次回、当サイト初の3部作の最終回をお楽しみにしてください。


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